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執筆者の写真栗原ヴァイオリン・ピアノ教室

弓、大ピンチ。


先日、長年お付き合いのあるヴァイオリン工房へ弓の毛替えに行きました。

なんと、10%以上値上がりしている!20年以上お世話になり続け、初めてのことで驚きました。

ここのところ弓の毛の仕入れ値が上がっているのだそうです。


皆さまもご存知のことと思いますが、弦楽器の弓には馬のしっぽの毛が使われています。

これは消耗品であり、弾くことで摩耗したり、演奏量に関わらず時間が経つとしなやかさが失われるため、定期的に交換する必要があります。


先日、世界的に有名なイギリスの弦楽器専門誌「the Strad」の最新号をパラパラめくっていると(電子版ですが)弓の毛の危機に関する記事がありました。それによると…


上質な馬の毛の原産地は、ほぼモンゴルとシベリアで、その多くが中国で加工されています。

しかしパンデミックによる中国各地の厳格なロックダウンで生産工場も止まりがちになり、物流もスムーズではなくなってしまいました。特に上海での商業活動のストップは致命的だったようです。通関に2ヶ月かかるケースもあり、ヨーロッパや北米の業者が注文してから実に7〜8ヶ月かかることも。


世界の弦楽器ビジネスの中心地はヨーロッパや北米ですが、中国の業者の生産量の減少によりストックが底をつき、次の入荷の予定が立たない…という業者まで出てきてしまいました。通関に2ヶ月かかるケースもあり、ヨーロッパや北米の業者が注文してから入荷までに実に7〜8ヶ月かかることも。


品不足のため、通常ならはねられてしまうような質の良くない毛でも扱わざるを得ないケースも多くなっているようです。高品質の原材料が希少になってしまったこと、そして燃料費の高騰や物流の混乱なども加わり、否が応でも値段が釣り上がっていくのです。


それに加えてなんとも心配なニュースが入ってきました。ヴァイオリンやヴィオラ、チェロの弓はブラジルの樹木、フェルナンブーコ(ペルナンブコなどとも呼ばれています)から作られるのですが、ブラジル政府は今後、このフェルナンブーコの商取引を象牙並みに規制していく、というのです。


以前から絶滅の危機が囁かれていましたが、ついに来てしまったか… これから楽器製作の現場はどうなっていくのでしょうか。カーボン素材の弓も優秀なものが多く、私も使っていますが、やはり木の弓の音とはどこか違う気がします。


気候変動やコロナ禍、戦争の影響は、音楽の世界にまで忍び寄っているのだと改めて感じました。



ビオラ弓 バイオリン弓
上:木製ビオラ弓 下:カーボン製バイオリン弓

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